

膨大な数のテレビドキュメンタリーを制作し続けているNHK。遡ると1950年代後半から、様々な社会問題をテレビ独自の視点で映像に写し取ってきました。現在、それらが見つめるテーマも社会全体から個人的なものまで幅広くなり、番組のまとめ方、視聴者への訴え方も多様化しています。過去から現在までの作品に研究者の分析を通して触れながら、NHKで制作されてきたドキュメンタリーの特色を、表現と技術という観点を中心に考えてみたいと思います。
日時 2019年2月2日(土) 10:00-18:00
定員 20名(要予約) ご予約はこちら
※午前のみ、午後のみご参加の方は予約フォームのメッセージ欄に明記をお願い致します
入場無料
主催 日本映像学会ショートフィルム研究会
日本映像学会研究会助成登壇者宮田章(NHK放送文化研究所上級研究員)
丸山友美(法政大学社会学部/兼任講師)
中根若恵(名古屋大学大学院人文学研究科博士課程後期課程)
司会/企画 洞ヶ瀬真人(中部大学ほか非常勤講師)
当日スケジュール10:30 中根若恵 上映・発表
11:30 丸山知美 上映・発表
12:30 昼休憩
(※12:30-13:00一時閉店します)14:00 宮田章 上映・発表(途中休憩あり)
17:00 休憩
17:10 ディスカッション
18:00 終了
登壇者情報NHKドキュメンタリーの制作技法の中長期的変容 ~主として技術環境の観点から~
宮田章|みやた あきらこの講演では、1953年のテレビ放送開始から現在にいたるNHKのテレビドキュメンタリーの制作技法の変容を主に技術環境の観点から4期に分けてお話します。16ミリフィルムの採用、同時録音技術の普及、フィルムロケからVTRロケへの転換、デジタル技術の進展といった技術的展開は意外なほど深くテクストの内容を規定しています。テレビドキュメンタリー研究の入り口になるだろう知見を、元作り手、現研究者の立場からお伝えしたいと思います。
プロフィール1986年東京大学文学部卒、同年NHK入局。番組制作局教養番組部を中心にテレビドキュメンタリー、歴史番組等を制作してきた。『NHKスペシャル シベリア抑留はこうして行われた』(1994)で放送文化基金賞奨励賞、『ETV特集 大森林の小さな家』(2006)でギャラクシー選奨、『ETV特集 見狼記』(2012)でATP賞優秀賞など受賞。2012年からNHK放送文化研究所上級研究員。
上映作品『NHK短編映画 ぼくらの家』1955年5月5日|20分
『和賀郡和賀町ー1967年 夏ー』1967年11月1日|60分 ディレクター:工藤敏樹
『ルポルタージュにっぽん 軍用地売ります 沖縄・1982年春』1982年4月8日|30分 リポーター:大島渚
トレーディング・ゾーンとしてのテレビドキュメンタリー --NHK『日本の素顔』(1957-64)に注目して
丸山友美|まるやま ともみ2003年のNHKアーカイブス開館をきっかけに、テレビが「何を」「いかに」放送してきたのか、その歴史の検証がはじまりました。本発表では、こうした過去の番組の視聴/研究環境が改善した現在において、初期テレビ・ドキュメンタリーとしてしばしば語られる『日本の素顔』(NHK、1957-64)を取り上げ、この番組の切り開いたドキュメンタリー表現とテレビの可能性を、技術的歴史的な背景を踏まえながら考えたいと思います。
プロフィール専門は、メディア文化史研究。現在執筆している博士論文では、戦後のNHK大阪局(JOBK)に注目し、ヴァナキュラーな制作文化からテレビドキュメンタリーがいかに制作されたのか見ている。オモローがテーマの研究者コミュニティ「communeplus」と「JOBKのメディア史研究会」主宰。論文に「『場所』と『非-場所』-二つのテレビ番組が映した道と街、そして人」塚田修一・西田善行編著『国道16号線スタディーズ』青弓社、2018年等。
上映作品『日本の素顔』(1957-64)より「第8集 日本人と次郎長」1958年1月5日放送|30分 制作:吉田直哉
「私」を放映する——テレビドキュメンタリーにおける自己表象の実践
中根若恵|なかね わかえ制作者自身が身の回りの事象を捉える自己表象のドキュメンタリー(セルフドキュメンタリー)は自主制作映画の領域で多く生み出されてきましたが、近年ではテレビにもその姿を現しています。しかし、大多数のテレビドキュメンタリーが採用する客観的語りではなく、一人称の視点から私的事柄を公へと開示する実践の特徴と意味をどのように理解できるのでしょうか。本発表はこの問いを『極私的ドキュメント にっぽんリアル』シリーズ(2014-15)の分析を中心に検討します。
プロフィール専門は映画学(ドキュメンタリー映画)とジェンダー論。論文に中根若恵「作者としての出演女性——ドキュメンタリー映画『極私的エロス・恋歌1974』とウーマン・リブ」(『JunCture 超域的日本文化研究』7号、2016年)、中根若恵「親密圏の構築——女性のセルフドキュメンタリーとしての河瀨直美映画」(『映像学』97号、2017年)。
上映作品『極私的ドキュメント にっぽんリアル:母になる』2014年06月01日放送|29分 ディレクター:中井佐和子
洞ヶ瀨 真人|どうがせ まさと(博士・学術)中部大学ほか非常勤講師。論文に「対話を触発するドキュメンタリー―60年代学生運動映画の表現様式をめぐって」『JunCture 超域的日本文化研究 第8号』名古屋大学「アジアの中の日本文化」研究センター、2017年。共著に、A. Phillips & H. Fujiki ed.
Japanese Cinema Book, British Film Institute, forthcoming (Ch. 32 “Dialogic Social Protests: Documentary on/with Student Movements”) 。