Entries

広島国際アニメーションフェスティバル2018のメモと感想

ミドリンゴです~~。8/23-27開催の広島国際アニメーションフェスティバルに観客参加してきました~。今回はエストニア特集で、エストニアの古今さまざまな技法やテーマの作品をたくさん観賞できましたよ!好きな監督の特集もあり、良かったです♡パーティは今回は最初と最後のみ参加で、人を紹介していただいたりで楽しかったです。

また今回のお土産ベストはレモスコです。要はすっぱいタバスコです。ピザを注文したら出てきて、かけたらおいしかったので購入しました。家でトマトパスタにかけてもおいしかったです!!アマゾンでも買えるようです。

上映以外には、トークやQ&Aも聞きました。メモをしたものを意訳的にまとめたので載せますが、個人メモで録音してません。あまり参照にならないです。

8/24(金)16:30- マイケル・デュディク・ド・ヴィット監督Q&A@7階フレームイン
全て『レッド・タートル』に関する質問でした。

Q1. 色について
子供向きのものは絵本との関係が重要で、原色が子供に好まれる色である。いわゆる、カリフォルニアカラーと言われる、ハリウッド映画の3DCGアニメーションが使用する色合いではない作品にした。例えば、『お坊さんと魚』では青と黄色、『ファザーアンドドーター』では茶色と青など、キーカラーを決めた。それは、色が溢れているよりも、たまにカラフルな方が感動が大きいと考えるからだ。また、光の量で見えが変化する周辺視というものがある。これは、夜など光源が少ない場合に、コントラストのみわかり、全てがグレーに見えることを指す。アニメーション映画で、フルカラーから急にグレーになると違和感が出る。スムーズに観賞できるよう試行錯誤した結果、技術者のアイデアを取り入れて、青色が10-20秒でフェイドアウトし、グレーの画面になるようにした。できるだけ、違和感のない印象を作りたかった。

Q2. 主観視点について
主観の視点は、「男→息子→女」という3者がシフトしていく設計になっている。しかし、主観視点の変化は扱うことがとても難しい。このために、編集などの女性スタッフ2名からアイデアを貰った。そうして、試行錯誤しつつ、シーンを作った。視点の移行を観客に意識させず、わかりやすくなるように気を遣った。また本作は、多様な解釈が可能な作品とも言える。日本版として出版された絵本は、文章を担当した池澤夏樹により、主観が島視点になっている。

Q3. 島の海際に生えている竹林について
現実の熱帯雨林の環境と違うが、竹林の雰囲気が大好きなので、そのイメージを優先した。

Q4. キャラクターの動きなどについて
キャラクターにカリスマ性を与えることが重要。非言語的な言葉で表現した。動きについてはアニメーターと相談し決めた。キャラクターに俳優を割り当て、その演技を撮影したものも参照した。スタッフは原画が12人、動画多数だが、通常より少人数で長期制作できたことが功を奏した。また、顔のクローズアップを映さないことで、観客にキャラクターの感情を想像させることができる。具体的に見せる以上の効果を生む可能性がある。

Q5. 反復する主題について
繰り返しのモチーフが観客の情動に働きかける。『レッドタートル』は長編なので、『ファザーアンドドーター』などよりも、より多い複数の反復を組み合わせている。


8/25(土)16:30-イシュ・パテル監督Q&A@7階フレームイン
監督から:大学では、グラフィックデザイン、アニメーション、写真を学んだ。それぞれに共通点がある。

Q1. アンリ・カルティエ・ブレッソンとの由縁について
アンリ・カルティエ・ブレッソンは、インドのイベントで出会った。その後、勤務先の大学に彼が来る機会があり、インドなどを半年ほど案内することになった。田舎の日常生活を中心に撮影した。

Q2. 制作で大切なことについて
アナログからデジタルなど、技術は常に変化するものである。だから技術よりも、経験や思考が重要である。そして、制作過程が大事だ。また、シンプルなコンセプトに集中することが制作過程では大切。それに対してどのような演出、技法などにするかを明確にする。

Q3. 欧米中心主義のカナダで、どのようにアジア的感性を表現するに至ったかについて
カナダは小さい国土で、他民族移民国家なのが幸いした。東欧人も多く移民した。死生観について、欧米では隠されタブー視されている。しかし、アジアではオープンに語られている。生から死への過程、死後への願望、ライフサイクルなど、非日常のイメージを描いた。結果的に欧米人とは違う表現になった。

Q4. 学部で学んだ3領域の相互性について
グラフィックは色の合成、アニメーションは動きがある。そして、アニメーションは室内、写真は屋外の作業が多い。それらの行き来による刺激が大切である。また、3ジャンルともストーリー、メッセージを伝えるものだ。それらのスキルが交雑して作品制作過程の力となる。

Q5. 現在のデジタル化した映像について
デジタル化した映像のアトラクション性とエンターテイメント性の問題点がある。ビデオゲームや商業映画、テレビでの暴力性について誰も声を上げない。暴力的な映像は売れるので、業界が制作をしなくなることはないのでは。それを止める手立ては思いつかない。

Q6. インドからカナダへ移住したことについて
国を越境する作業や作品は、民族・文化・国籍などの交雑を起こす。より開かれた国際的な経験は、作品にも人にも良い影響があると考える。


8/27(月)16:00-丸山正雄氏Q&A@7階フレームイン

はだしのゲンのための取材が最初の訪広島だった。その後、『一番電車で走る日』や広島球団の映画の冒頭、原爆ドームについての映画、そして『この世界の片隅に』まで、いろいろな作品を通じて広島に関わりがある。

Q1. 今敏監督の『夢みる機械』について
本作は10分程度のみ完成している。それを上手く繋げられる監督がいないので封印することにした。今後、制作の可能性がある今敏監督についてのドキュメンタリー映画で、部分的に含まれるかもしれない。彼については、未完の漫画『オーパス』のアニメ化を計画し、現在は脚本を開発中だ。

Q2. 『この世界の片隅に』について
クラウドファンディングで集まった3000万円による後押しで、大きな資金を呼び込めた。また、商業アニメで監督が地域の各地まで細かく舞台挨拶に行くことは珍しい。そうしたことが、長期的人気の原動力に一助を成している。制作過程では、片渕監督が広島に度々調査として車で行くのに困った。
製作において、完成品ではなく、魅力ある欠陥品を作ることを意識している。それは、次回作があると考えているからだ。緻密なこだわりより、粗くても魅力と力がある作品を目指している。一作で燃え尽きるのではなく、継続的な製作をしていくことが大切である。グループワークをする上で、何か一つで良いので、楽しみを見つけることが大切である。それは、チームの雰囲気を良くし作品の力になっていくからだ。

Q3. M2について
事の経緯をおさらいすると、最初に在籍していた虫プロの倒産を予測した頃、『あしたのジョー』制作スタッフの先輩や仲間など多くが移り、マッドハウスを作った。別のスタッフはサンライズ設立した。その後、マッドハウスの借金が5億ほどに達したとき、テレビ会社が会社を買ってくれた。そして自分は独立しマッパを設立した。
M2はプリプロのみの会社である。プリプロとは、企画~脚本~絵コンテまでを指す。それらを全部揃えて、現場・制作会社に渡す。今でいうと、マッパやスタジオ地図に制作を渡す流れである。
良い制作会社は3年先までスケジュール埋まっている。また、埋まってない会社は力が弱い。中国は良い制作会社があるが、人件費が日本より高い。北京辺りに、美術大学卒でスキルの高いアニメーター多い。かつて上海動画だったスタッフを含め、後続の育成が成され、力をつけている。リミテッドアニメーションの演出が上手いスタッフも増えた。中国は人口・観客数が多いため、作品を売り上げられる。だから人件費も高くなる。
日本は、スタッフの育成体制が弱い問題がある。また、海外向けの作品制作が弱い。そこをなんとかしないといけない。

Q4. 製作委員会について
別のスタッフが管理しているので関知していない。資金集めと内容についてのみ関与している。

Q5. 作品について
毎回、作る作品はヒットする・してほしいと思って作っている。『この世界の片隅に』では、最初の資金集めの五年間では、泣けない戦争映画への出資は難しいという風潮があった。それでも作らなければならない作品がある。この作品では、原作に流れる淡々とした雰囲気を監督が大切にした。
また、自分自身は、なんでもおもしろがる傾向がある。それでは何でもありになり、決まりがないので仕事としてはまずい。しかし、虫プロに居た頃、手塚治虫からは、毎日違うことを言われた。昨日の指示が翌日には覆され通用しない。指示を出されて行った作業は無駄になることもあった。つまり、言われたことをそのままやるのではなく、自分の頭で考えて作業することが重要だ。ひいては、状況の変化に合わせた製作を行うことの大切さを学んだ。また、多様さを大切にすることだ。


8/26(日)16:00- イシュパテルトーク@2階大ホール

『Bead game』は、攻撃と戦争がコンセプトだった。線絵を描くのではなく、シンプルなイメージで制作したかった。コストを安くするための経済的な側面もあった。
最初に、線とは何かから出発した。パウル・クレーの言「動く点が線」を参照し、点で絵を表わすが、点自体を描かない方法を取った。素材は単純で使いやすいものであることに着眼し、ビーズを選んだ。そして、シンプルなスケッチを作成した。主題に即して、先行する作家の絵や、インドの泥でモチーフを描く壁画などを参照した。実作は、絵コンテなしで即興的に作った。制作では、集中することが大切である。
代表的な生物をシンプルな平面で表した。また、時間経過と共にカメラ運動の加速をした。1ショット内で、5フィートから24フィート幅にフレーム対象サイズが変化していくように撮影した。
音楽について、インドのドラムは、もともと攻撃の鼓舞に使用されていた。これはテーマに適していた。また、リズムを加速可能である。音を先に録音し、音楽を数パートに分割して、その区切りを意識しつつ映像を制作した。

『After life』は、死後の世界は存在するのかを主題にした。複雑な絵柄で表すことにした。まずは、死についての様々な文献を読んだ。その後、スケッチを作成した。これも絵コンテは無い。技法は、ガラス上に油粘土で描画し下から照明を当てている。粘土をガラスに厚く乗せ、それを掘って描き、光の透過を撮影した。頭の中のイメージをどんどん作っていく。動きはスローモーションで考えた。シュールレアリスム的で、絵がメタモルフォーゼしていくこと、また角が尖っていない絵柄にした。
音楽は、石笛の演奏にした。録音した音楽を、コマ単位で分割して制作した。

『Paradise』は、幼少期に学んだ詩の一編を参照した。外見の美しさではなく内面の美しさ、そして
他者を羨む心がテーマである。最初に、自然の森をスケッチした。植物の構造の正確な把握を目指した。その後、数枚のセルをレイヤー分けし、背景を描いた。その対照として、黒い鳥の憧れるパレスの人口的な環境を作った。クリスタルパレスは、様々な宮殿のスケッチをして、制作しそれをクリンナップした。そして、黒い紙に針でクリンナップ下線画に沿って穴を開けた。遠近感を出すために、開ける穴のサイズを変えている。その黒い紙を裏からライティングして撮影した。また、光が星の形状に撮影できるレンズで撮った。
キャラクターは後から合成している。これは、紙に描いた。5名の作画スタッフで、3年かけて仕事した。この時は、コンピュータ制御のカメラで撮影したため、カメラワークの詳細なタイムラインを作った。音楽は、パンパイプのグループに依頼し曲を録音した。