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「サウルの息子」を観ました

この前、「サウルの息子」を偶然観ました。たまたま、家族と映画を見に行こうとして選択枝が少なかった結果、前知識なく観たのが、思いのほか興味深い作品でした。カンヌの今年のグランプリだったのですね~。

ホロコーストがメインテーマで、アウシュビッツ強制収容所で働くゾンダーコマンドの男が主人公というストーリー。彼が映っているシーンはほぼ背景がぼけていて、出来事が全て音声とぼけた映像で表されています。そこが、描くことと、描かないことの中間の表現になっていました。フォーカスがまったく合ってない映像で(しかもロングテイク)始まる劇映画を観たのは生まれて初めてです。

昨年、ドキュメンタリー映画研究の講義で出てきた、ホロコーストについて書かれた文章を思い出しました。ホロコースト体験者の証言を集めたドキュメンタリー映画「ショア―」のクロード・ランズマン監督は、あまりにも凄惨な出来事は、表現することが不可能だし、表現することで、その出来事が陳腐化する恐れがあるというようなことを書いていました。片や、ジョルジュ・ディディ=ユベルマンは、残されたホロコーストを証言する4枚の写真と向き合っていくことが重要といった内容で、それぞれ考えが違っていました。

映画は、ちょうど、この二つの意見の中間にあるような映像表現でした。強い意見のどちらでもなく、その間にあるような表現がおもしろかったです。