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「野ばら」と髙橋克雄監督の世界 レポート

こんにちは、台風は特になんということもなく過ぎ去りましたね。ミドリンゴです。
さてさて、この前の土日に開催した「「野ばら」と髙橋克雄監督の世界」に際して
企画をしていただいた大塚浩平さんによるレクチャーがありました。

トーク内容をまとめたものをお送りいただいたので掲載します。
昔の作品は特にその時代背景や、制作側の状況などがわかるとより理解が深まりますね~。
ではでは、以下より!
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takahashikantoku_lecture.jpg
いつもお世話になってます!レクチャー中の大塚浩平さん

髙橋克雄監督の経歴は人形劇の演出から始まり、
テレビの創成期には主として子供向け番組の脚本や演出に関わってこられました。
その一方で絵本の原作や教育映画の演出などもされています。

お生まれは1932(昭和7)年。
人形アニメーションで有名な川本喜八郎さんが1925年、
久里洋二さんと手塚治虫さんが1928年のお生まれですので、それより少し後になります。

少年期には戦意高揚アニメを見て育ったそうで、
それらの映像が多くの少年を戦争へと駆り立てたことを身を以て体験したことから、
ご自身は子供向けの良質な作品を作ることを常にモットーとされてきたそうです。

『ピーターうさぎの冒険』(1958年)は、アニメーションではありませんが、
人形を操る棒を画面上では見えないような工夫をしつつ撮影しており、
今見てもどうやって動かしたのか不思議に思えるシーンがあります。

また、この作品は近年、イギリスの「ベアトリクス・ポター学会」で
日本におけるベアトリクス・ポターの童話映画化第一号と認定されています。

『一寸法師』(1967年)は日本の人形アニメーションで初めて
「ブレ」の効果を表現した作品と言われています。
アニメーションは1コマづつ撮影するため、本来撮影したコマに「ブレ」はありません。
現在のようにパソコンはありませんから、そうした効果を後から付加することもできません。
この効果は一寸法師が鳥に乗って飛ぶシーンや、針の剣を飛ばすシーンなどで
スピード感を表すのに使われています。

この『一寸法師』を1967年にカナダの国立映画庁(NFB)で上映した際に、
当時カリグラフィー(フィルムを直接引っ掻いたりして絵を描く手法)による
抽象アニメーションで世界的に知られていた作家である
ノーマン・マクラレン氏がこの特撮手法に興味を持ち、
「フィルムを解析したいのでしばらく貸してほしい」と申し出たほどだったそうです。

その代わりに、ということで、それまで外部には一切見せたことがなかった
自分のカリグラフィーマシンを公開し、実演までしてみせてくれたそうです。

『かぐやひめ』(1972年)は、外務省の依頼で海外向けに制作された作品ということで
8カ国語で作られましたが日本語版はありません。
また、一般向けの上映はこれまでほとんどされておらず滅多に観られない貴重な作品です。

音楽は林 光さん、劇中歌は吉田日出子さん。
人形の衣装を何度も水につけて硬さを取ってから仕立てるなど
小道具から人形の頭にいたるまで細部にまで神経を使っており、
今見ても非常にクオリティの高い映像となっています。

撮影も特撮が多く1日あたり2〜3秒しか撮影できず、
ほぼ1年掛かりで制作したとのことです。

髙橋監督はちょうどこの頃にお母様を亡くされており、
人形のデザインにその面影があったり、月からの使者はあの世の存在と設定するなど、
その影響が色濃く出ているそうです。
また、スイスから取り寄せた高性能ハーフミラーを使って撮影時に大部分を合成するなど、
ご本人もどうやって撮影したのか覚えていないほど面倒で複雑な合成を一度に済ませていたそうです。

なお、当時の皇太子ご夫妻(現在の天皇皇后両陛下)がこの作品を大変気に入り、
オーストラリア訪問の際に公式の手みやげとして持って行かれたそうです。

『野ばら』(1977年)は皆さんご存知の小川未明(1882-1961)の原作です。
第一次世界大戦が始まった頃のバルカン情勢を念頭に朗読用に書かれた作品ということで、
ナレーションは原作の文章そのまま生かしています。

この作品は髙橋監督の会社による自主制作作品ですが、制作途中で資金が底をつき
自宅を抵当に入れ借金をしてやっと完成させたとのことです。
その甲斐あってか翌年の国内の映画賞を総嘗めにし、
1979年にブルガリアのバルナで開かれた映画祭では国際児童年を記念して
この年設けられたレオニード・モギー賞を受賞、世界的に脚光を浴びました。

『野ばら』の人形はカナダで見つけた陶器(セラミックス)の兵隊人形をヒントにしたそうです。
当初は陶土を焼いて人形を作っていたそうですが、焼成時の色が一定しないため、
プラスティック系の粘土で低温焼成したものに後から彩色することにしたそうです。
小道具もすべてこの方法で制作し、撮影ではハーフミラーなどこれまで培った技術をふんだんに投入しています。

この作品は21世紀になってから作品に込められたメッセージが再び脚光を浴び、
今も世界各地の映画祭などで上映されており、また国内でも上映活動を続けられています。

『メルヘンシアター』はNHKで1980年代に約10年に渡って毎日放映された
「番組のお知らせ」のタイトルバック用のアニメーションです。
セラミック・ドールを使って世界の童話や民話を表現した1分間のミニアニメーションで、
髙橋監督は「毎晩親子が楽しみにしてくれる1分間にすること」を目指したそうです。

物語を知っている大人から観ればずいぶん省略されているように思えますが、
「話自体は正確でなくても、これを観た親と子がその家独特の物語を作ってくれればよい」
という方針で制作をされたそうです。
今回上映された「赤ずきん」の人形などは大きさ6センチほどで、
小道具はピンセットで動かしたそうです。

髙橋監督はこのシリーズの製作中にビデオとパソコンによるコマ撮りアニメーションシステムを
世界で始めて開発、1983年度から放送用の作品もフィルムからビデオによるものに変わりました。
これはVTRによるコマ取り映像の定時放送としては世界初だそうです。

この他にも髙橋監督は人形アニメーションによるコマーシャル作品を多数手掛けておられます。
文明堂(カステラ)、高島屋(ローズちゃん)、日立(白くまくん)、カルピスなど、
一定年齢以上の方なら一度はご覧なったことがあるかもしれません。
また、1970年に開催された大阪万博では日立グループ館の総合企画と演出、
日本政府館での日本初のマルチスクリーン映像の制作、
青少年向けドキュメンタリー映画の制作など幅広く手掛けられています。
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画像などご覧いただきながら、約40分ほどのトークでした。

私も「番組のお知らせ」は小さいとき少し観た覚えがあり、
昔、自分が何気なく目にしたものが何だったのか、大人になってからわかるって
やっぱり、おもしろいなぁと思いました。

ご来場くださった皆様、
メインに企画+レクチャーをしてくださった大塚浩平さん、
作品上映を快くご承諾くださった、髙橋克雄著作権事務所の高橋佳里子さん、
本当にありがとうございました!

『野ばら』は現在ネットでご覧頂くこともできます。
上映等を希望される方は下記リンク記載の「連絡先」までお願いいたします。
こちらです!
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